1,前提条件
打てる
コートの四隅からいろいろなストロークを打てる。
動ける
コートを素早く、しかも持続的に動くことができる。全面をカバーできる。
その上で、心技体の総合力の戦いとなり、また、知=戦術が必要になってきます。
心技体知を具体的に見ると下記のような項目が必要になってきます。
メンタル面
強い精神力、すべて自分の責任、粘り強い性格、プラス思考、気持ちの切り替え
フィジカル面
豊富なスタミナ、スピード的持久力、はやいフットワーク、なめらかな身のこなし
技術面
クリアーの力(押し合いに勝てる)、粘り強さ、全面を守る力、クロスを打てる、多彩なフットワーク
インテレクチュアル面
戦術の組み立て、試合の流れを読む、コンディショニング、スカウティング
2,代表的な攻め方(戦術の基本)
関西の強豪、永井ジュニア、香川スクールの指導者のレポートによると簡単な戦術についての意識は10歳後半から12歳の間までには芽生え、ただ打ち返すのではなく、相手選手を苦しめるように試合をするようになるそうです。
代表的な戦術
- クリアーとドロップやカット、ヘアピンとロブなどを使って、相手選手をコートの前後に揺さぶる。
- スマッシュやカット、ドロップ、ドライブなどを使って、相手選手をコートの左右に揺さぶる。
- そしてオープンスペースを作り出して、そこを攻める。
バドミントン教本の戦術
バドミントン教本における戦術とは、「対戦相手にプレッシャーを与えるショットを打ち、エラーさせるように仕向ける方法と、対戦相手からプレッシャーを与えられた場面に対応する方法」としています。重要なことはプレッシャーを与えるというところです。これを攻撃原則といいます。1打1打を決め球にする必要はありませんが、常に80点のストロークで相手にダメージを与える、これが大切です。
また、エラーをさせるように仕向けるとあります。バドミントンの試合ではエラー(ミス)での得失点が非常に多いことを表しています。反対に考えるとエラーが少なければ勝てる可能性が高いとも言えます。
プレッシャーを与えるストロークとは
- 相手の足を止めて遅らせることができるストローク。(止める)
- ディセプションやストップ&ターンをさせて、相手のバランスを崩すストローク。(崩す)
- 次のストロークを引き出す(予測できる)ストローク。(読む)
- 相手の返球ストロークやコースを限定させるストローク。(読む)
3,プレッシャーを与えるストロークを打つためには
それでは、具体的にプレッシャーを与えるストロークを打つ方法を考えていきます。
(1)十分な体勢から打つ
- はやく(速く、早く)落下点に移動し、余裕のある体勢から威力のあるストロークを打つ。
- 十分な体勢から、同じフォームで多彩なストロークやコースを打ち分ける。(読ませない)
- いろいろなストロークを使って、次のストロークを読ませない。予測させない。ワンパターンにならない。
十分な体勢
十分なレシーブ体勢
(2)オープンスペースを攻める
- 四隅を攻め、オープンスペースを作り、そこを攻める。
- コーナーに追い込み、逆のコーナーを攻める。
- 対角線(一番コートで長い距離)を攻め、オープンスペースを作り、そこを攻める。
- ラウンド(バック奥)とフォア前を攻め、最後にフォア奥に追い込むイメージ。
- スマッシュでサイドラインを攻め、返球を逆サイドに攻める。
(3)足を止め、次のストロークを読む
- リピートショット(二度打ち、三度打ち)で攻める。
- 十分な体勢からオープンスペースを攻めるように見せ、同じコースを続けてせめて、相手の足を止める。
- スピードに変化をつける。移動のスピード、ストロークのスピード、コースに緩急の変化をつける。
- シャトルを打つリズムやテンポに変化をつけ、相手の足を止める。
- 上下、左右、早打ち、ため打ち、ジャンプなどのディセプションで相手の足を止める。
- ワンパターンにならないように注意する。
(4)ストップ&ターンをさせる
- リピートショットで相手の行きたい方向に行かせない。早くホームへ戻ろうとしているときに、同じコースを攻める、など。
- クロスからクロスへの攻撃や難しい角度への移動(同じ方向や狭い角度の移動など)をさせ、相手の体勢、重心を不安定にさせる。
(5)粘る
- 対戦相手がミスをするまで打ち続ける。スタミナ勝負をする。
- はじめ守り、後から攻める。
- ミスをしない。決められるのは仕方がないが、自分からミスをしない。
(6)自分の得意なストロークで攻め、相手の得意なストロークを封じる
- 自分の得意なストロークで攻め、相手の得意なストロークを封じる。
- 勝負所で自分の得意なストロークや攻め方を使って勝負に出る。エースを最初から使っていると最後に決まらなくなることがあるので注意する。
- 相手の得意なストロークや戦法を見極め、それを拾い攻め手を封じる。相手を自滅させる。
- 相手を読む。
下記の表を作成してみて、分析して攻め方を考える。
(7)相手の弱点を攻める。自分の弱点を攻めさせない。
- 相手の弱点を見極め、重点的に攻める。
- ラリーを組み立てる。
- 1球で決めようとせず、ボディーブローを繰り出すように、ダメージを与えて追い込み、崩すこと。
- 崩すための伏線を作る。
(8)自分の得意な攻撃、パターンを複数持つ。
- 得点しやすい自分の得意ショットを活かしたパターンを練習して身につける。
- 通用しなくなったことを想定して、必ず攻めパターンは複数持つこと。
以上プレッシャーを与えるストロークを打つための代表的な方法を8つ紹介しました。一つでも多く身につけられるように努力しましょう。
3,コート内の位置取りについて(ポジショニング)
バドミントンではホームポジションに戻ることを教えられます。基本的にはホームポジションに戻ることが大切です。しかし、どんな場合でもホームポジションに位置取ることが正解かというとそうではありません。ポジションの位置はラリー内で常に変化します。時々に応じたポジションを取ることが大切で、そのことをポジショニングと言います。
(1)ホームポジション
基本のポジション。ショートサービスラインから1.5mほど後方。
また、自分の長所と短所、相手選手の攻め方のタイプなどを考え、変化させることも大切です。
- ネット前が苦手→少し前目にポジション
- コート奥が苦手→少し後ろ目にポジション
- スマッシュが強い相手→少し後ろ目にポジション
- クリアー中心に攻める相手→少し後ろ目にポジション
- ドロップが多い相手→少し前目にポジション
(2)ポジショニング
ポジショニングは常に変化する。どこに戻るか?ポジションの考え方を示します。
- 自分の打ったストロークやコース
- 相手選手のシャトルの打ち方、体勢
- 1,2を総合的に判断してポジションを決める。
- 相手選手が打ってきそうなところがエリアがカバーできるポジション
- 守りやすいポジション
- 次に動きやすいポジション
- 4~6を備えたポジションをとる。
以下にポジションニングの例を示します。
(3)よいポジションをとるためには
ただ単に打ち返すのではなく、攻撃原則で相手を追い込んでいくようにストロークすることが大切です。次のストロークやコースを制限できれば、相手の返球を引き出し、読むことができます。また、その返球に備えたポジショニングをとることができます。
バドミントンは対人競技のため、相手の返球がわからない状況での練習を行うことが重要です。
ポジションでの構え方は、①ラケットを上げる、②シャトルのコースに面を出すなど当り前のことを当り前に行います。また、相手の返球を考え、体の向きを相手に向けることが大切です。
ラケットを上げて準備する場合、ラケットの高さを工夫する必要があります。自分が打った球が大きく高い場合には、ラケットは低めでも良いですが、低くやネット下へ打った場合には高めに準備する必要があります。
4,シングルスのフットワーク
コート全面をスムーズに動くためには、色々なフットワークを自然に使い分けることができるようになることが大切です。
- 大きく動くときは、ランニングステップやクロスステップ。
- 速く短い距離を動くときは、ツーステップ。
- ネット前へラッシュするときなどは、ランニングステップ。
- ラウンドへ早く入るときは、左足からスタートできるスキップ。
このように、いろいろなステップが使えるように、日ごろから、ステップ練習やフットワーク練習でいろいろなステップを身につけておきましょう。
5,シングルスのサーブとその対策
(1)サーブの基本
サーブは唯一自分で自由に打てるストロークであり、工夫次第では十分な武器になります。エースにはなりませんが、相手のリズムを狂わせるストロークとして利用しましょう。
- センターへ大きく高くが基本。シャトルを垂直落下させることが理想的。
- 規則の変更に伴い、サーブをより攻撃的に打てるようになった。フリックサーブやショートサーブの利用も考える。
- ロング一辺倒ではなく、色々なサーブを打つことによってリズムを狂わせる。
(2)なぜセンターか?
センターにサーブを打つと対応面積が狭くなり、守りやすい。再度だと対応する面積が広くなり、守りにくい。
(3)ロングか、ショートか?
ラケット進化により、スマッシュ力の向上が著しい現在、ロングサービスでは、1球目から速いスマッシュの攻撃にさらされることが多くなりました。そのため、1球目をショートから始める展開が多くみられるようになりました。スマッシュの速い対戦相手だったり、スマッシュを打たれたくない展開では、ショートサービスから始めて、相手に上げさせるように工夫することも重要な戦術になっています。
(4)サーブはタイミングが大切。
いつも同じタイミングでサーブを出すのではなく、相手の撃ちにくいタイミングで打つことが大切です。時には時間をかけて焦らして打つ。時には構えてすぐに打つなど変化をつけるようにしましょう。
(5)必ず入れる
サーブは必ず入れること。ラリーもせずに1点献上するサーブミスは絶対に防ぎましょう。厳しすぎるコースを狙わない。サーブで決めようとしないことが大切です。
(6)サーブレシーブの対応
サーブは必ず腰から下で打つストロークになります。よって、サーブする側は不利な条件からのスタートとなることも頭に入れましょう。サーブレシーブは攻撃的に返球することを狙いましょう。そのためには、集中して、サーブのタイミングを合わせること。ネットより高い打点でシャトルをとらえること。積極的に攻める姿勢で返球すること。
5,ラリーの組み立て
(1)ラリーの組み立ての狙い
これらのショットを引き出す。そのために、積極的に攻撃する。(攻撃原則)
(2)攻めるコース
- コートの四隅
- サイドライン
- センター(ボディアタック)
これらを効果的に散らし、前後、対角線、左右への揺さぶりからオープンスペースを作って、そこを攻める。立体的なラリーを組みたてる。また、攻めは低く、逃げは大きく高く、つなぎはセンターへを意識する。
攻撃原則を意識して、ただ単に打ち返すのではなく、ラリーを効果的に組み立てる意識を持つこと。相手のストロークや返球コースを限定し、次のストロークを引き出すこと。(読む)
(3)ストロークの組み立て
- ストロークの種類、コース、角度、球足の長さ、タイミングの緩急などを組み立てること。
- スマッシュの緩急、ドロップ、カットの緩急を効果的に使う。
- 決め球ではない、つなぎのスマッシュも効果的に使用する。
- 突撃=カウンターなどで飛びついたりして、返球速度を速め、一気に攻め切る。
- インプレーを続けること。自分からアウトを打たない。ネットにかけない。相手コートへ必ず返球することが基本。練習では厳しく狙い、試合では慎重に狙う。
- ネット前はラケットワークが相手から見える。そのため、同じフォームからいろいろなストロークを打ち分けることがとても重要です。ラケット面を作って、相手に見せて打ち分ける。ディセプションになります。
- スマッシュレシーブは打ったポジションから一番遠いコースへ返球することを狙う。ストレートをクロスに、クロスをストレートにレシーブする。
- ネットへの返球は少し浮いても、ネットの近くに返球することを意識する。シャトルの最高点が自分のコート内になるようにコントロールする。
- 意味あるラリーをする。つなぎ球、逃げ球、崩し球、決め球を使い分ける。
- つなぎ球
追い込まれた状況で打つ球。相手にコースを読まれないように注意する。また次の返球に対応できるコース(主にセンター)につなぐ。
- 逃げ球
大きく高くが基本。ハイクリアーや高いロブで時間をかせぎラリーの不利な状況をリセットする。逃げのドロップは厳禁。
- 崩し球
決め球を打つための、相手にダメージを与えるショット。ダメージを与えるとは、追い込んだり、コースが制限されるショットを打たせたりすること。
- 決め球
得点を決めるためのショット。崩し球の痕に積極的に決め球を打つ。ただし、攻め急がないことも展開では必要。
6,対戦相手別戦術
(1)背の高い相手
サーブ、クリアー、ロブの高さに注意。中途半端な高さだとカウンターを受ける心配がある。前後の揺さぶりが有効。ネット前が安定しない傾向があるため、積極的に前後に動かし、攻める。左右は守備範囲が広いのでなかなか有効打を引き出せない。動かしてから攻めるなどの工夫が必要。手足が長い半面、ボディ周辺は弱い傾向があるため、センター攻撃を入れることも重要。
(2)背の低い選手
背が低いため、コーナーへはしっかり足を運ぶ必要がある。クリアー、ロブでは足を運ばせて、スタミナを奪うこと。前後左右への揺さぶりも動く範囲が大きくなるため有効。左右への揺さぶりは手足が短いため、スマッシュレシーブがしにくい。スマッシュで手を伸び切らせ、ストレートに返球させるように工夫する。動きの速い選手も多いので、リピートショットも有効。
(3)動きのはやい選手
対角線や前後左右への揺さぶりへの対応がうまい。反面リピートショットなど、同じ方向への攻撃などで行きたい方向に行かせないことが重要。また、クロスの返球などに弱い傾向にある。戻りかけのコースなど、きっちりしたコースよりも、移動しかけの時に攻める。ディセプションなどで足を止める工夫が必要。
(4)動きの遅い選手
前後、左右、対角線などに積極的に動かし、反対のオープンスペースを攻める。楽な体勢から打たせないように気をつける。
(5)スマッシュの強い選手
強いスマッシュを警戒し、ショートサーブを多めに使う。攻撃的にストロークを打ち、楽な姿勢で打たせない。しっかり構える。少し後ろ目にポジションをとる。自分から攻撃し、相手に簡単に攻めさせない。
(6)左利きの選手
いつものようにラリーをすると、右利き同士とはフォア、バックが反対になります。逃げ球をストレートに逃げた場合、相手のフォアとなり、不利な状況になります。左利きの選手はラウンドが苦手な選手が多いので、積極的にラウンドを攻めましょう。左利きからのクロススマッシュはシャトルが逃げていく球となるため、返球しにくくなるので、注意が必要です。
7,半面での練習の注意点
(1)注意点
半面での練習はコートに大人数が入ることができ、効率的。しかし、実際にはオールコートの約6割の広さであることを忘れてはいけません。ただ単に前後に配給するだけではだめです。半面コートにも四隅やサイドラインがあります。しっかりと各ストロークをコントロールする意識が必要です。
(2)半面での基礎打ち
初心者にとっては大切なパターン練習です。上級者にとってはアップになってしまいがちです。基本をしっかり確認する場として活用しましょう。
ポイント
- ラケットを上げてしっかり構える。
- 構え直しを早くする。
- 打って次の球を意識する。
- ネット前はラケットを上げて入る。
- コースにラケットを準備して入る。
- 奥からのストロークはできるだけ同じフォームから打ち分ける。
- ラケットを構える高さを工夫する。大きく上げた時は下目でも良いが、沈めたときは上目に構えます。
- ポジションへの戻りのテンポを工夫する。相手のリズムに合わせて。
(3)半面シングルスの練習
コートが前後に長く、サイドは狭いという特徴があります。スマッシュは簡単には決まりません。しっかり長い前後に動かす練習をしたい。
ポイント
- サーブを大きく深く打って、しっかり相手をコーナーに移動させる。
- クリアーやドロップ(カット)、ロブとヘアピンで前後に相手を動かす。
- 浅いクリアーやネット前の浮き球が来たら、積極的にスマッシュやプッシュで決めに行く。
- スマッシュはしっかりサイドとセンターを打ち合分ける。
(4)初心者からシングルスの強化へ
- ラケットワーク、トスノックで各ストロークの自動化を図る。
- ラケットノックで動きの中でのストロークの精度を高める。
- 半面の基礎打ちで対人技術を高める。
- 半面のオールショート、オールロングで半面のカバー力を高める。
- 半面対角で疑似的な全面をイメージする。
- 全面の1点返しなどで全面の広さを覚える。
- 2対1などで全面のコートカバー力を高める。
- 全面パターン練習などで全面のコートカバー力を高める。
- ノックやドリル練習で戦術意識を高める。
- ゲーム練習で戦術意識を高める。